位相のずれについて8枚のスライドでまとめてみたら

 散乱理論において、部分波の位相のずれが求まると散乱断面積などが得られるので、位相のずれは重要な概念でした。今回は、位相のずれについて見ていきましょう。


 自由な球面波として、球ベッセル関数を導入します。エネルギーを波数kで書き直し、krを1つの変数のように扱うと見通しが良くなります。角度依存性を持たせる場合は、これに球面調和関数を掛けることになります。

 球ベッセル関数は一応普通の関数を用いて書けるのですが、多少複雑な形になるので、統一的に見るために漸近形を求めておきます。もちろん正確な結果を抑えることも重要ですが、まず極端な場合を考えて見通しを良くすることで、物理的な直感が働きやすくなります。


 少しだけエネルギーをずらした波を足すことで微妙に波がうなるので、波束として扱うことができます。波束には中心があるので、位相のずれと位置のずれの関係を考えられます。

 定数のポテンシャルによる散乱について考えます。井戸型ポテンシャルと言うと普通は引力的なポテンシャルですが、ここでは斥力的なポテンシャルについても考えます。


 斥力的なポテンシャルの極限として、剛体球散乱を考えます。低エネルギー極限では等方的なs波散乱の寄与が大きく、先ほど波束を考えて得られた結果を用いると、確かに剛体球の表面で反射されていると理解できます。

 無次元化したエネルギーを用いて、位相のずれのエネルギー依存性を見やすくします。


 弱いポテンシャルの場合でも低エネルギーの極限を考えると、先ほど波束を考えて得られた結果を用いれば、引力的なポテンシャルでは波が引き込まれ、斥力的なポテンシャルでは波が押し出される、というような理解ができます。

  最後に、強い引力ポテンシャルの場合を考えます。束縛状態ができるほどポテンシャルが深いと、入射波にエネルギーが無くてもポテンシャルの中で節ができます。よって、低エネルギー極限での位相のずれの値から、束縛状態の数が分かります。



 今回は、位相のずれについて見てきました。波の位置のずれの関係を見たり、束縛状態の数との関係を見たりすると、位相のずれに対して直感が働くようになりますね。解析をする上で、散乱理論は重要な理論のひとつです。私は位相のずれについて勉強して、ようやく散乱理論について理解できたような気がして、嬉しくなりました。

ポップラーン

数学や物理の「8枚のスライドでまとめてみたら」シリーズを更新しています。少しでも学ぶことの楽しさを伝えられたらと思います。上の方に記事のまとめがあります。

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