化学結合について8枚のスライドでまとめてみたら

 化学は「化けるに学ぶ」と書くだけあって、比較的非自明なことの多い学問です。基本的には、様々な原子がどのように結合して、どのように多種多様な物質が構成されているかについて学びます。今回は、化学の大黒柱である、化学結合について見ていきます。


 原子は中心の原子核に電子が引き付けられているような、球対称な系なので、球面調和関数という関数を用いると見通しが良くなります。その際、電子の存在確率が0である、節面の数がいくつあるかが重要です。節面の数が同じなのに形が違うように見える関数があるのは、地球の緯度と経度が違うことと同じ理屈から来ています。

 電子はスピン1/2のフェルミオンなので、スピンの向き(自転の回転軸の向きのようなもの)に関して上下2つの自由度があり、同じスピンの電子は同じ場所に来られないという制約があります。


 一体のポテンシャルであれば単一の電子配置で良いのですが、実際には二体のポテンシャルである電子反発のポテンシャルもあります。なので、本来の状態は複数の電子配置の重ね合わせで表現されます。ただ、電子反発のポテンシャルは原子の球対称性を壊さないので、単一の電子配置で考えた方が定性的に理解しやすくなります。

 エネルギーの低い原子軌道から電子を詰めていくと、入り方に周期性が現れるので、これをまとめた表を周期表と言います。基本的には節面の数が少ない順に電子が入っていくのですが、角度部分の節面が多いほど原子核の近くにいる確率が少なくなり、内側の電子に邪魔されて原子核からの束縛が弱くなるので、p,d,f軌道のように、角度部分の節面が多くなるほど電子の入る順番が後回しになりやすいです。


 周期表の右端の元素は希ガスと呼ばれていて、電子がしっかり詰まっていて安定なのですが、希ガス以外の原子は中途半端に電子が詰まっているので電子が動きやすく、その中途半端な電子で他の原子の電子と対を作りやすいです。これを化学結合と呼びます。

 エネルギーと粒子数の関係から、原子のパラメーターとして電気陰性度と化学硬度を導入できます。電気陰性度がエネルギーの1階微分、化学硬度がエネルギーの2階微分のようなものだと思うことができます。電気陰性度や化学硬度は原子だけでなく、イオンや基(原子団)に対しても定義することができます。


 電気陰性度は電子を引き付ける力のようなものです。

 化学硬度はどの程度その電子数がちょうど良いのかを表す指標のようなものです。


 量子力学的な干渉があるので、原子の個々の性質が分かっただけでは、それらの原子が構成する物質の性質が完全に分かったことにはなりません。ですが、個々の性質が分かることで、格段に見通しが良くなることも事実です。また、電子の数が違うだけの原子が、そして、それらの原子によって構成される物質が、これほどまで多様性に富んでいることはまさに圧巻です。私は化学を学んできて良かったと、しみじみ思いました。

ポップラーン

数学や物理の「8枚のスライドでまとめてみたら」シリーズを更新しています。少しでも学ぶことの楽しさを伝えられたらと思います。上の方に記事のまとめがあります。

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