二体問題

 二体問題は、重心の運動と相対的な運動に分けて考えられるので、まるで一体問題のように扱うことができます。三体以上の問題は複雑になるので、とりあえず二体問題について考えてみましょう。

 全体の質量をM、重心の速度をV、換算質量をμ、相対速度をvとしました。真ん中の式を展開すれば左の式になることが確かめられると思います。ここでは簡単のため一次元的に書いていますが、速度をベクトルにすれば三次元などでもそのまま使えます。位置について考える場合は、速度を位置に置き換えればそのまま重心の位置と二体間の距離になりますし、加速度についても同様です。これは時間微分によって式の形が変わらないためです。


 さて、全体の質量と相対速度というものを考えたら、対になっている重心の速度と換算質量の式が得られたというのが今回の話だと考えて良いでしょう。という訳で、重心の速度と換算質量の定義がもっともらしいか確認してみましょう。

 とりあえず片方の質量を0とすると、重心の速度はもう片方の速度に、換算質量は0になります。重心の速度は一体問題の場合と一致しますし、そもそも相対的な運動がないので換算質量が0になるのは妥当な気がします。

 今度は両方の質量が同じ場合を考えると、重心の速度は両方の速度の和の半分に、換算質量は共通の質量の半分になります。重心の速度については、同じ速さで同じ向きに運動する場合は共通の速さになりますし、同じ速さで逆向きに運動する場合は0になるので、確かに妥当です。換算質量が共通の質量の半分になることについては、壁と物体をばねで繋ぐよりも、二つの物体をばねで繋いだ方が両方の物体が一緒に動くので、単純に二倍動きやすくなりそうだ、と考えるとつじつまが合います。

 ここで、壁は動かないものの代表として扱っているので、式の上では片方の質量を無限大だと考えたことに対応しています。この場合の重心の速度は壁の動く速度ということになりますが、もちろん質量が無限大だと考えているので、この壁は動きません。この時、もう片方の物体の質量がそのまま換算質量になりますが、これも直感に合います。



 今回は、二体問題について見てきました。2つも物体があったら訳が分からないよ、と最初は思いましたが、重心の運動と相対運動に分離することで割と普通に扱うことができると知り、当時の私は換算質量ってすごい、と感動しました。もちろん、三体以上になるとまた訳が分からなくなるのですが、その訳の分からない動きになぜか見とれてしまう自分がいます。

ポップラーン

数学や物理の「8枚のスライドでまとめてみたら」シリーズを更新しています。少しでも学ぶことの楽しさを伝えられたらと思います。上の方に記事のまとめがあります。

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