一様電子気体について8枚のスライドでまとめてみたら

 金属について考えるにあたって、無限に大きな箱に電子を詰め込んだ、一様電子気体を考えることは、金属のイメージをつかむ上で良いことだと思います。今回は、ファインマン図の環状図形を用いて、一様電子気体の性質を見ていきます。


 クーロンポテンシャルは1/rの形をしているので、予めフーリエ変換を用意しておきます。

 第二量子化したハミルトニアンを用意します。


 まずは自由電子気体と呼ばれる、電子反発を無視した状態を考えます。実際にはフェルミ波数kFまできっちり電子が詰まっているということはなく、電子反発を無視して一電子近似することは無理をしています。なので、自由電子気体における運動エネルギーと交換エネルギーの他に、一様電子気体では補正が必要であり、そのエネルギーを相関エネルギーと呼びます。ちなみに、波数(ℏを無視すれば運動量)kは長さの逆数の次元を持つことに注意すると、密度の1/Vや交換エネルギーの1/rの部分から、それぞれの量がkFの何乗に比例するのかは予想がつきます。

 電子相関を取り入れるために、一番簡単な環状図形を考えます。この近似を乱雑位相近似(RPA)と呼び、高密度で良い近似です。ちなみにΣ±は、±を+とーに置き換えたものの和をとるという意味で導入しました。


 金属はある意味で、電子がイオンからばらばらに動いているプラズマだと考えることができます。そのように動く電子の振動をプラズマ振動と呼び、その量子化された振動数(ℏを無視すればエネルギー)をプラズマ振動数と呼びます。ちなみに、q=0にしているのは、空間的な変化を無視して、時間的な変化を見るためです。

 E=0の分極関数を簡単に表すため、リントハルト関数を導入します。E=0とすることで時間的な変化を無視し、空間的な変化に注目できます。


 電子がたくさんあるとポテンシャルが遮蔽されます。これを遮蔽効果と呼びます。

 ポテンシャルの中心から遠いところではポテンシャルが振動します。これをフリーデル振動と呼びます。



 今回は、一様電子気体について、乱雑位相近似のレベルで見てきました。もっと低密度では運動エネルギーよりも電子反発による相関エネルギーの効果が顕著になり、ウィグナー結晶と呼ばれる電子の結晶ができることが知られています。ただ電子を詰め込んだだけのモデルとはいえ、一様電子気体からは多くのことが学べます。一様電子気体のことを学んだ私は、素直にすごいな、と思いました。

ポップラーン

数学や物理の「8枚のスライドでまとめてみたら」シリーズを更新しています。少しでも学ぶことの楽しさを伝えられたらと思います。上の方に記事のまとめがあります。

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