グリーン関数について8枚のスライドでまとめてみたら

 実際の系では、たくさんの粒子が相互作用しています。これを理解する上で、多体のグリーン関数は重要です。今回は、そんなグリーン関数について見ていきます。


 多体波動関数は情報量が多いので、縮約密度行列にしてしまえば変数が減ってすっきりします。ここで、τはスピンと空間の座標を合わせたものです。

 多体の波動関数は変数が多すぎて見た目に分かりづらいですが、その代わりに多体の状態を粒子の配置(どの状態に何個粒子が詰まっているか)で表すと、直感的な理解がしやすく、粒子数の変化も扱いやすくなります。もちろん一般には、多体の状態は粒子の配置の重ね合わせになります。


 後で使うので、ステップ関数を導入します。値が0から1に変わるところが、確かにステップになっていますね。

 縮約密度行列に時間依存性を持たせたものをグリーン関数と言います。フーリエ変換すれば、一体のハミルトニアンのグリーン関数と似たような関数になります。


 相互作用のないグリーン関数の逆演算子と、グリーン関数の逆演算子との差を自己エネルギーと呼ぶことにすると、自己エネルギーは二体のポテンシャルを一体のポテンシャルに押し込めたようなものになります。これで、一粒子グリーン関数と自己エネルギーが分かれば、系の状態が分かったことになります。

 自己エネルギーが分かれば、まるで一粒子の時間に依存しないシュレーディンガー方程式のようなものが書けます。これを準粒子方程式と呼びます。多電子系の状態を単一の電子配置で近似することをハートリー・フォック近似と呼び、これは二体のポテンシャルの影響が弱ければ割と良い近似になります。


 ファインマン図を使うと、摂動計算が直感的にできるようになります。

 結局、ヘディンの方程式を収束するまで再帰的に回せば系の状態が分かるのですが、これは大変なので、実際には重要な図形を選ぶという、近似をする必要があります。



 今回はグリーン関数について見てきました。多体問題を一体問題に還元するという話でしたが、結局は多体問題の大変さが、自己エネルギーを求める大変さに変わってしまいました。ですが、一体問題に還元することで見通しは良くなりました。一体問題に還元する試みとしては、他にも密度を基本変数とする密度汎関数法などがあります。私は、多体グリーン関数について勉強して、多体問題は大変ですが、物理の多様性の源でもあるので、やはり面白いな、と感じました。

ポップラーン

数学や物理の「8枚のスライドでまとめてみたら」シリーズを更新しています。少しでも学ぶことの楽しさを伝えられたらと思います。上の方に記事のまとめがあります。

0コメント

  • 1000 / 1000