三和音

 音楽を構成する上でハーモニーは重要です。今回は複数の音を同時に鳴らすことである和音(コード)、その中でも特に三和音を中心に話をしたいと思います。



 まず、コードについて話す上で有用な五度圏について話します。同時に音を鳴らした時、単音であれば近い音を鳴らすとうなりが生じて不協和音になりますが、実際の楽器には倍音(2倍、3倍の周波数の音)が含まれているため、遠くの音を鳴らしても不協和音になる場合があります。半音上がる度に周波数は2の1/12乗倍ずつされますが、2の7/12乗が約1.5なので、半音7つ上(ドから見てソ)の音が一番、同時に鳴らしても不協和音になりにくいとされています。半音7つずつ上げたものを円状に並べた図を五度圏と呼びます。(五度圏と呼ぶ理由は、例えばドレミファソのようにドからソまで5つの音があるように、半音7つ上の音を五度と呼ぶからです。)

 この図で遠い位置関係にある音ほど、同時に鳴らした時に不協和音になりやすい気がします。例えば、反対側は半音で6個上(ドから見てファ#)の音なのですが、同時に鳴らすとかなり不協和音になります。また、その隣は半音上と下(ドから見てド#とシ)の音なので、これらも分かりやすく不協和音になります。不協和音のなりやすさは、単純な音の近さと、五度圏での距離の遠さからだいたい推測できます。


 ここからは三和音の話に入っていきます。この時、不協和音のなりやすさと別に、和音に関する緊張度と明るさについて考えてみましょう。三和音の中には、音の間隔を半音を基準として数えることにすると、低い音と真ん中の音の間隔と、真ん中の音と高い音の間隔がありますが、それぞれ低い間隔と高い間隔と呼ぶことにします。まず、緊張度を考えると、音の間隔がしっかりそろってる方が緊張感がありそうで、音の間隔がバラバラな方が緊張感がなさそうだと感覚的に思えるかもしれません。よって、低い間隔と高い間隔が同じであるほど緊張度が高いものとします。また、明るさに関しては、単純に音が高いほど明るく、音が低いほど暗く聞こえるかもしれません。よって、三和音の真ん中の音が高いほど明るく、低いほど暗い、すなわち、低い間隔が高い間隔より長いほど明るく、逆に短い方が暗いとします。


 具体例として、ドレミファソラシから1音飛ばしで3つの音を選んで基本的な三和音を作り、性質を見ていきます。低い間隔と高い間隔を見て分類すると、ドミソのように低い間隔が4、高い間隔が3であるようなメジャー(M)コードと、ラドミのように低い間隔が3、高い間隔が4であるようなマイナー(m)コードと、シレファのように低い間隔も高い間隔も3であるようなディミニッシュ(dim)コードがあります。ちなみに、ディミニッシュコードは低い音と高い音の間隔が6なので不協和音になります。先ほどの緊張度と明るさの話を考えると、メジャーコードは低い間隔の方が長いので明るい和音、マイナーコードは低い間隔の方が短いので暗い和音、ディミニッシュコードは低い間隔と高い間隔が同じなので緊張感のある和音だと考えることができます。ディミニッシュコードより間隔を広げた、ドミソ#のような低い間隔も高い間隔も4であるようなオーギュメント(aug)コードも考えることができますが、これも緊張感のある和音になります。


 最後に、五度圏を使ってコード進行について考えます。次のコード(和音)への行きやすさを考えるにあたって、基本的には左回り(半音7つ下)に進行しやすいとします。理由はこじつけっぽいかもしれませんが、半音7つ上(ドから見てソ)の音は周波数が約1.5倍なので、その二倍音は元の音の三倍音(ソの二倍音はドの三倍音)になるため、なんか進行しやすそうだからです。逆の右回り(半音7つ上)は、三倍音になってやっと進んだ先の音(ドの三倍音がソの二倍音)になるので、左回りほど進行しやすくはないとします。


 ただ、左回りに進行しやすいと言っても、三和音では3つの音が鳴っているのでどれかの音を中心に考える必要があります。そのことを念頭に入れつつ、具体例として先ほど話した4つの和音に関するコード進行を考えます。

 まず、半円に収まるような和音である、メジャーコード(ドミソ)とマイナーコード(ラドミ)について考えます。左回りに進みやすいことを意識しつつ、どちらの和音も一番左端にあるドを中心音として考えます。左回りに進行しやすいとしているので、どちらもファを中心とした和音に行きやすいと考えることができます。また、これらの和音に限った話ではありませんが、今はコード進行に関しては構成音だけを考慮していて音の順番は気にしていないので、例えばドミソの代わりにソを1オクターブ下げたソミドを使っても似たような話になると考えています。

 次に、円の反対側の音を含んだ和音であるディミニッシュコード(シレファ)について考えます。もはや半円に収まりきらなくなったために中心音がわかりませんが、反対側の音であるファとシが強烈な不協和音として主張してきます。進行としては、ファとシが少しでもずれれば和音として安定するため、ファとシに近い音、特に半音隣のミやドに行きやすくなり、例えばミとドを含む和音であるドミソなどに行きやすいです。

 次に、円全体を使った和音であるオーギュメントコード(ドミソ#)について考えます。これは対称的な形で完全に中心の音がわかりません。なので、どの音を中心にとっても良いとすると、構成音の左回りの位置にあればどれでも進行しやすそうだと想像できます。


 以上がだいたいの話です。ここでは三和音を中心に話しましたが、実際には四和音以上を考えることもできますし、逆に二和音を考えることもできますが、三和音のイメージがあるとそれらも何となく感覚的にイメージできるのではないかと思います。(音を同時ではなくバラバラに鳴らすアルペジオという手法もあります。)また、実際に曲を作ることになると、個々のコード進行だけでなく、全体の曲の構成も考える必要があります。最初のコード(和音)がそのパートの雰囲気の大部分を決めてしまうために、曲の構成に関しては、各パートの最初のコードが同じだと曲が単調になりやすいので、それをパートの雰囲気に合ったコードにするとよいでしょう。コードの雰囲気に関しては、今回の内容を踏まえつつ、和音がそれぞれT(トニック)、S(サブドミナント)、D(ドミナント)のどれに属しているかを考えるとだいたいのイメージができると思います。また、コード進行は有名なものがよくまとめられていますが、それらを用いる際は通常ドレミファソラシの代わりにCDEFGABが使われているので気をつけてください。



 という訳で、今回は三和音の話をしました。和音やコード進行がわかると、一気に音楽が楽しくなると思います。みなさんが少しでも作曲に興味を持っていただけたなら幸いです。

ポップラーン

数学や物理の「8枚のスライドでまとめてみたら」シリーズを更新しています。少しでも学ぶことの楽しさを伝えられたらと思います。上の方に記事のまとめがあります。

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