遊びによる自己の拡大
ここでは、遊びを「現実を改変してとらえること」と定義します。スーパーマンでもないのにスーパーマンごっこをするように、実際と違うことを言って冗談と言うようなものです。遊びは発想を自由にして、視野を広げる能力を育てます。今回は、遊びについて話します。
最初、何もわからない状態においては、人は見たままを信じることしかできません。現実をそのまま受け入れることしかできないのです。その状態で、保護者によって愛情いっぱいに育てられ、その保護者に対して愛着が湧くことで、その環境に安心感を覚え、そこを自分の居場所と認識する訳です。ここで愛着や居場所を確立できないと、育ててもらう相手がいないので自立するのが難しいどころか、普通に生きていくことすら難しくなり、常に不安で遊びどころではなくなります。
自分の居場所を獲得し、自分なりの常識ができると、人は遊ぶ余裕が出てきます。つまり、自分の常識が確立した状態なので、その外の話をすると冗談だと認識することができるようになります。例えば、作り話(「俺、石油王なんだよね。庭掘ったら石油出てさ。」など)を聞いた時に、それが作り話だとわかるようになります。遊ぶことによって、見たままを信じるだけでなく、見えないことも想像できるようになるので、視野が広がります。愛着に関して言えば、保護者と離れてもぬいぐるみと一緒なら寂しくない、などといった感じで自立していくことができます。このぬいぐるみのような移行対象(保護者の代わり)があった方がスムーズに自立しやすく、そのような移行対象はクッションや毛布のような肌触りのいいものが適しているらしいです。
このように遊びによって発想が自由になり、どんどん視野が広がっていくと、不測の事態に強くなっていきます。視野が狭いと、いつもと少し違うだけですぐに混乱してしまいがちですが、視野が広ければ、いつもと違うことが起こってもすぐに状況を飲み込み、臨機応変に対応しやすくなります。愛着に関して言えば、これは何があっても自分の力で何とかしようとする、いわゆる自立した大人になるということです。外に目が向くことで、新しい居場所を自分で開拓していくことができるでしょう。居場所は多いほど精神的に安定しやすくなるので、もちろんただ多ければいいという訳ではないですが、少しずつ居場所を増やしていけるといいですね。
今回は、遊びによって現実の外に目を向けることで、視野が広がり自力で生きやすくなるという話をしました。目の前のことでいっぱいいっぱいにならないように、少しは遊ぶ余裕を持てるように意識するといいかもしれませんね。
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